新天地

思考を止めるな

棄てる

排水溝を掃除するスプレーから塩素の臭いがして、ああ、わたしにとっての今年の夏の匂いってこれなんだと思った。

人間関係においての正解も、自分にとっての“生きる”を賭けているものの正解もわからず、きみとの別れから1か月が経とうとしている。穴が空いたコップみたいなわたしに必要なのは、水を注ぐことではなく穴を塞ぐ術だった。

誰かに煙草を吸う女は無理と言われてもどうということはない。あなたから見たわたしが女なだけだから。

 

もう懐しむことにも痛みが伴うんだね、元気にしてる?なんてことも聞けなくなったんだね、ついに僕は自分を縛ることを君にも許さなかったね。それ以外の人間に干渉されたり縛られることはもっとちがう苦痛が伴うこと、失ってから気づいた。

こうして君のことを書くためじゃなく書きはじめた言葉がどんどん君へのものになっていくんだね、それが僕にとってのあなたへの執着の現れなんだろう。

 

君にぶつかって愛されなかった自分のことを想像すると、恐ろしくなって息の吐きかたも忘れてしまう。この世に掃いて捨てるほどある歌のように、君に身勝手な愛をぶつけただけなのに、自分の人生を必死に生きているように錯覚してしまったらどうしよう。

ようするに僕は、きみのためになる愛について考えたことがなかったんだね、身勝手に愛をぶつけることが、君にとっての幸せに繋がる自信がないんだね。また愛してくれるでしょ、なんて甘えたことを少しでも君に思う自分を愛せなくなってるんだね。

 

わたし君に対して少し怒ってるんだ、許せないって思うところもちゃんとあるんだ、でも悔しいんだけど、ちゃんときみと幸せになりたいって思ってしまうんだ。全然ばかじゃなくて、純粋で、本気だったんだ。ごめん、冷めたフリしてごめんね。2人のことを不幸にしたのは、紛れもなく私だったね。

 

きみのことを今はもう、すこしたりともわからなくなってしまったの、わたしが愛してる君と君が愛してた僕はどこに行ったんだろう。

君はもう答えを知ってるんだろうなあなんて、これもぜんぶ、幻想なのを知る