新天地

思考を止めるな

mine

いつも通り冬の匂いのする朝、昨日ぼくは髪を切った。頬が隠れないほどの長さまで。

 

去年、家族だった人の声を聞けなくなってから、その人がきっかけで伸ばし続けていた髪を切った。その行動が古くさくてださくてかっこ悪くても、全然よかった。ダサい自分でも全然よかった。でもその髪型は中途半端で、なんだかずっと体が重かった。

 

今日、6年ぶりにこんなに髪を短くして、嬉しくて笑ってしまった。かわいいとか似合ってるとかは正直どうかわからない、でもひさしぶりにぼくはぼくのものだと思えた。息がしやすくて、髪ひとつでこんなに変わるのが面白くて笑えた。そしてちょっと泣いた。ぼくたちは矛盾と共に生きている。

 

ぼくの性別も、からだも、心も、生き方だって全ては僕だけのものだった。誰になんと評価されようとも、それをどうするか決定できる権利。それが僕だけに与えられたもの。

人は誰しも平等ではなくて、みんなが等しく地獄に落ちている。そのなかで与えられた真の平等。この決定権だけは、誰にも奪われないよ。

 

なにかを得ることは何かを棄てること。